2020年度環境教育ポスター公募展(第12回)
2020年度の受賞作品と、審査委員から優秀と認められた佳作(Web公開作品)を、このページでご紹介します。受賞作品については作者のコメント・審査委員の講評も併せて掲載しています。
【作品一覧】※受賞名をクリックするとそのポスターに移動します。
※過去の入賞作品はコンクールメモリーのページからご覧になれます。
ブロック | 東日本 | 西日本 | 海外 | 合計 |
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小学校 | 589点 | 664点 | 149点 | 1402点 |
中学校 | 812点 | 1,000点 | 34点 | 1846点 |
高校 | 197点 | 270点 | 1点 | 468点 |
合計 | 1,598点 | 1,934点 | 184点 | 3,716点 |
今年は新型コロナウイルス感染症の拡大が広がる中で、特別企画としての開催になりました。国内からは3532点、海外は15か国から184点の作品が集まりました。
ホールで表彰式を開催することはかないませんでしたが、2020年11月23日にオンライン表彰式を開催しました。
受賞者とそのご家族、審査委員の先生方にご参加いただきました。受賞者と審査委員が直接対話する場面もあり、画面越しではありましたが受賞者の皆さんをお祝いすることができました。また、特別ゲストとして、長年環境教育ポスターコンクールの審査員を務めていただいている建築家・安藤忠雄先生にご参加いただき、子ども達に対して環境に関するお話をいただきました。
2020年度環境教育ポスター公募展 受賞作品と審査委員講評
作文コンクールの受賞作品はこちらをご覧ください
◆作品全体に対する審査委員の講評
- コロナ禍でもたくさんの作品が集まったことをうれしく思う。家にいる時間が例年より長かったので、環境についてより深く考える機会になったのではないか。環境問題について、「自分だったらどうするか」と自分事として考えてほしい。
- テーマに対して自分が「本当に思ったこと」を描いているかどうかを、評価の際に大切にした。人から聞いたことを描いても説得力がない。「自分が思ったこと」「感じたこと」をどう表現すればよいか、を考えていくことが、美術では非常に大切な感覚になる。
- 指導者の方には、「子ども達の今」を大切に指導していただきたいと考えている。低学年だから考えられること、表現できることがある。大人目線の技法の指導ばかりに偏らないようにしてほしい。
- 選ばれるテーマは、その年の子ども達の生活の様子や関心の対象がダイレクトに反映されていると思う。今年は例年に比べテーマが多様だった。環境に関して特定のテーマに焦点化されなかった理由は、コロナ禍もあり、環境に関わる活動に参加できなかったことの反映か、あるいは、子ども達が多様な環境テーマに思いを巡らせる時間があったからと考えられる。
■文部科学大臣賞
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大阪市立波除小学校 5年宮本 煌大
- 本人コメント
- プラスチックゴミをへらす活動の1つにマイバックの持参が求められています。一人一人のちょっとしたエコ活動が地球の未来を守ることを表現しました。
- 審査委員講評
- マイバッグが地球を守るというメッセージが、地球をHugするバッグの絵でとてもうまく表現されています。いろんなバッグを描くことによって、地球にはいろんな人がいるということをもうまく表現されていると思いますし、BagとHugを掛け合わせている意図も分かります。言いたいことを絵や言葉などいろんな要素を使いながら本当にうまく表現されていると思います。
松山市立椿中学校 1年田頭 花唯
- 本人コメント
- ゴミを出さない努力やリサイクルの重要性はもちろんですが、人間が汚してしまった地球をきれいにする努力や姿勢も大切だと気付きました。一人でも多くの人が、この問題を自分のこととして真剣に考え、行動することで未来は明るくなるはずです。「行くぞ、希望ある未来へ」という思いをこめて描きました。
- 審査委員講評
- 桃太郎の「鬼退治」を「ごみ退治」に置き換えたところが秀逸です。そのテーマに沿って画面には汚れた砂浜を掃除する桃太郎たちが描かれていますが、桃太郎の刀はゴミバサミになり、猿の背には「4R」と書かれています。「行くぞ お前ら」という言葉に汚してしまった地球を皆できれいにしようという意気込みを感じさせてくれますが、また人間の心の中にいる鬼を退治するんだということもイメージさせてくれます。
東京学館船橋高等学校 2年森迫 莉沙
- 本人コメント
- 地球温暖化、今ならまだ間に合います。一人一人が意識して、向き合うことが大切です。みなさんの心に届きますように。
- 審査委員講評
- 氷の溶けてしまった「故郷=北極=地球」に帰ってきたシロクマが描かれています。近くの海には頼りなげに救助用の浮き輪が浮かんでいます。背景の氷も黒く汚れた中で、唯一白い小さな氷の上に乗っているシロクマの茫然とした表情が印象的です。「帰宅」という言葉に託されたものは何でしょうか。故郷、地球に帰ってきたシロクマに未来の人間が重ね合わされているようでもあり、今ならまだ昔の状況に帰れる(戻すことが出来る)というメッセージでもあるようです。
■環境大臣賞
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相模原市立弥栄小学校 3年寺田 真悠
- 本人コメント
- ぼくは深海の生き物が大好きです。それは深海にはふしぎなことがあるからです。まだ、見つかっていない生き物もいるだろうし、なぞがたくさんあるからです。すこしの光で生きている生き物のためにも深海まできれいな水をとどけることができるように、水をきれいにつかってほしくて、このポスターをかきました。
- 審査委員講評
- おそらく現代は深海まで汚されていることを何かで知り、それに触発されて描かれた絵なのだろうと思います。深海に住む生き物たちにとっては海が汚れてきた理由など到底分からないでしょう。作者は自分の好きな深海の生き物たちには直接会うことはないのかもしれませんが、そのような自分たちが関わり合うこともない生き物たちの為にも出来ることをしようというメッセージが聞こえてきます。
広尾学園中学校 3年辰己 芙優
- 本人コメント
- 私は、自然がたくさんあった昔のきれいな景観が損なわれ、今はゴミや排気ガスなどに溢れてしまっていることに一番危機感を感じ、このポスターを描きました。どんどん発展していくだけではなく、少しずつ昔のような自然いっぱいの景観に戻していくことも重要なのではないでしょうか。
- 審査委員講評
- 木の年輪にその時代の環境の記録が刻まれるというイメージの作品として見せてもらいました。近い将来、この絵のように年輪からその時代の環境イメージが浮かび上がり、見られるようになるのかもしれません。昔は自然溢れる場所の記憶としての年輪だったのが、工場からの煙、排気ガス、ゴミの散乱、枯れ木など環境悪化の記憶装置として木の年輪があると捉えた着眼点が素晴らしいと思います。
■安藤忠雄賞
建築家の安藤忠雄氏に選出いただいた作品です。
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■入賞:小学生の部
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台東区立台東育英小学校 5年天野 桜都
- 本人コメント
- だれか1人でも地球を大切にしていなければ、みんなの地球は壊れていきます。それは、みんなの未来も壊した、と言っても過言ではないでしょう。そうなる前に、みんなで私たちの地球を守ろうという思いで描きました。
- 審査委員講評
- ポスターに書かれた「地球」という視点に感銘を受けました。
私たちが直面している課題は、まさに地球レベルでの環境の変化が、身の回りの生活に影響を及ぼしているところにあります。しかし、私たちがすぐにできることは生活の中で取り組めることです。それが地球環境の改善につながっていきます。ポスターを見て、そんなことを考えさせられました。
一方で作者は、鮮やかな明るい色で未来の地球を表現しています。私たちの努力で暮らしやすい地球が実現できることを期待しているのでしょう。そういった前向きな気持ちがよく表現された、そして私たちに希望を持たせる作品です。
東久留米市立第五小学校 3年泰江 陽菜
- 本人コメント
- ニュースでオーストラリアの森林火災について知りました。コアラがやけどをしていたしゃしんやカンガルーがまるこげになっているえいぞうを見ました。コアラやカンガルーは、向かってくる炎を見てどう思ったのか、考えるととてもこわい気持ちになりました。動物たちは赤い炎を見たくなかったと思います。ほんとうは動物が見たいのは緑の森だと思いました。森をまもるのはわたしたちだと思います。
- 審査委員講評
- 見ている人に強烈なインパクトを与えるポスターです。とても小学校3年生とは思えないポスターの構成力と、環境問題の訴え方に驚きました。
一見した時には気づかなかったのですが、描写しているのはコアラの顔左上の部分です。その目に映っているものは、昨年から今年にかけてオーストラリアで発生した森林火災によって命を絶たれた仲間の姿です。流す涙にも心打たれます。
このような事態はなぜ起こったのか。最大の原因と考えられているのが地球規模での環境の変化です。その変化によって動物が暮らせなくなった環境には人間も暮らせません。人間が抱える大きな問題を、動物を通して訴えかけた優れた作品です。
神戸市立西郷小学校 2年長谷川 蓮
- 本人コメント
- たべものをすききらいしてのこしてしまうことは自分の体にも、ちきゅうにもよくないこと。やさいのスタンプをたのしくしながらちきゅうをだいじにしようと思いました。
- 審査委員講評
- 野菜のスタンプを中心にして、野菜と楽しそうに戯れる小人をその周りに配置してあります。こういったテーマのポスターでは、とかく食べ残した食材を描き出して「食べ残しをやめよう」と訴えることが多いのですが、本作品は、大切にしたい食材(野菜)を描くことによって、残さず食べ物をいただこうと訴えているように思われました。発想の豊かさを感じました。
ポスターの構図にも工夫がされていて、左上にスペースを設けることによって、また右上に向かってスタンプのグラデーションが施されていることによって、気持ちが解放され、明るい未来を予感させます。
神戸市立桜が丘小学校 2年西山 百々香
- 本人コメント
- みんなが地きゅうをすくうヒーローになったら、どんな問だいでも、どんどんかいけつしていけそうだなと思ったので、このポスターをかきました。
- 審査委員講評
- 地球(の環境)を守ることの大切さを、ストレートに訴えかけているポスターです。明るい色を中心に使用することによって、明るい未来社会を期待させます。これを見ているととても元気が出てきます。
元気の源は、やはり地球を救うことのできるヒロインの描写です。ヒロインを大きく中央に配置し、よく見ると、彼女の洋服には海の動植物たちが群がっていて、マントには陸の動物たちが群れています。まさに地球を救うヒロインです。
小学校2年生らしい想いに溢れた秀逸な作品です。皆がこのようなヒロインの気持ちになって暮らすことを期待しています。
■入賞:中学生の部
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神戸市立太山寺中学校 3年友野 陽彦
- 本人コメント
- ニュースや新聞などで、人間の出すプラスチックが、自然界に、大きな影響を与えていることを知り、そのことをもっと多くの人々に知ってもらい、少しでも意識を変えていってほしいという願いから、この作品を描きました。
- 審査委員講評
- 白く描かれた海ガメやイルカ、クジラが泳いでいます。よく見ると海に棄てられたゴミが集まって生き物たちを形作っているようです。対比するように遠くの黒い街も印象的です。アイデアを活かしたメッセージが伝わってきます。
■入賞:高校生の部
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東京学館船橋高等学校 2年葛巻 涼日
- 本人コメント
- ゴミで汚されていく海の怒りを表現しました。個人的には、海はいつどこで見ても美しいと思っているので、海の美しさを損なわないよう、絵はなるべく綺麗な色合いで描きました。海を見ただけではわからない、海の底に眠っているゴミを絵で見えるようにして、そのゴミがどこから来たのかを文字で表したことで見た人の心に響くようなポスターになったと思います。
- 審査委員講評
- 海に沈んでいる廃棄物が突然吸い上げられ目の前に現れたら私たちはいったいどうするでしょうか。海は地球上の生物が生きていく上でとても大切なものです。しかし一見美しく、私たちにとっても大切な海は、様々な廃棄物で日々汚されています。作者は廃棄物とは対照的に海の美しさを丁寧に描くことで海の怒りを壮大なイメージで表現し、私たちに環境問題に真摯に向き合うことを呼びかけています。
和歌山市立和歌山高等学校 1年田野岡 里樹
- 本人コメント
- ゴミをきちんと分別してほしいという思いで描きました。ペットボトルをキャラクター化して、だれにでも親しみやすいポスターにしました。これを見て、少しでもゴミを分別しようと思ってくれる人が増えたらいいなと思います。
- 審査委員講評
- 地球の限りある資源を有効に活用し、しっかりと後世に資源を残していくためには、私たち一人一人が3Rとも呼ばれるリデュース、リユース、リサイクルを解決方法の一つとして自分事として捉え、実行していくことが大切です。この作品は、分別されないペットボトルをキャラクター化してユーモアたっぷりにリサイクルの大切さを伝えています。「もえるごみちゃうんやけど」のコピーも楽しく人々の心に残る作品です。
■海外賞
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【金賞】
グアム日本人学校
中学3年(アメリカ)権田 あい子
- 本人コメント
- 海の中で生きている生物はプラスチックを餌だと思い食べてしまい、死んでしまいます。私は、人間が海にプラスチックを捨てるというとても大きな環境問題がなくなって欲しいと思い描きました。
- 審査委員講評
- プラスチックのプラスを”+”として、削減してマイナスにしようという標語がとても斬新で心に響きます。環境ポスターでウミガメがモチーフになる作品が多いなか、正面から亀をとらえた構図は珍しく、ビニール袋を咥える表情に多くのメッセージが込められています。海の青、±の赤、亀の緑の色合いも綺麗で、ポスターとして大変優れた作品であると感じました。
【銀賞】
デトロイトりんご会補習授業校
小学6年(アメリカ)三宅 杏奈
- 本人コメント
- 私はアメリカに来て、アジア、アメリカ、インド、ロシア、アフリカなど、様々な国の友だちができました。その友達と、学校で一緒に環境のことを勉強し、この地球を守るためには世界中の人々の協力が必要だということを学びました。この世界の友達と力を合わせて緑を守り、地球の未来を守りたい、そんな想いでこのポスターを描きました。
- 審査委員講評
- 海外で多くの友達ができてそのみんなと力を合わせて地球の自然を守っていきたい…そんな思いが絵から溢れていて素敵なポスターに仕上がっています。様々な人種・国籍の子どもたちが心をひとつに笑顔で描かれている、大切な未来へ向けてのメッセージです。
【銅賞】
Palmerston North Ross Intermediate School
中学1年(ニュージーランド)和田 夏芽
- 本人コメント
- 私は今始めればまだ地球の環境はこれ以上悪くならないと思います。木を切り過ぎたり私たち中心に考えないで、まずはできる事からやりはじめないといけないと思います。
- 審査委員講評
- 病院のベッドで酸素吸入と点滴を受けている地球。Not too late! 今ならまだ救える、という標語とぐったりしている地球の姿から、私たちがすぐに行動をおこさなくてはいけない、という緊急性が伝わります。インパクトあるポスターで、背景のモザイク調のデザインもカラフルに表現されて多様性が感じられます。
■Web公開作品(佳作)
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